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大杉栄「獄中記」

このごろ読書をするのにはなはだ面白いことがある。本を読む。バークニン、クロポトキン、ルクリュ、マラテスタ、その他どのアナーキストでも、まず巻頭には天文を述べてある。つぎに動植物を説いてある。そして最後に人生社会を論じている。やがて読書にあきる。顔を上げてそとを眺める。まず目に入るものは日月星辰、雲のゆきき、桐の青葉、雀、鳶、烏、さらにくだっては向こうの監舎の屋根。ちょうどいま読んだばかりのことをそのまま実地に復習するようなものだ。そして僕は、僕の自然に対する知識のはなはだ浅いのに、いつもいつも恥じ入る。これからは大いに自然を研究してみようと思う。

 

読めば読むほど、考えれば考えるほど、どうしてもこの自然は論理だ。論理は自然の中に完全に実現されている。そしてこの論理は、自然の発展たる人生社会の中にも、同じくまた完全に実現せられねばならぬ。

 

ー獄中記 大杉栄